【判例シリーズ】最判H29.3.24「マキサカルシトール(オキサロール)事件」 解説動画

2024.06.06

本判例は、最判H10.2.24「ボールスプライン軸受事件」で判示された均等論(※)の第5要件に特化した判例です。
本判例の重要ポイントは、「出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきである。」という点と、「出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。」という点です。
ちなみに、「客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるとき」の具体例は、原審(知財高判H28.3.25)(P.73)において、「例えば,出願人が明細書において当該他の構成による発明を記載しているとみることができるときや,出願人が出願当時に公表した論文等で特許請求の範囲外の他の構成による発明を記載しているとき」と判示されています。

(※)…特許発明の構成と対象製品(被告製品)の構成が文言上一致していなくても、
① 相違部分(置換部分)が特許発明の本質的部分ではなく、
② 相違部分があっても、特許発明の目的・効果と同一であり、
③ 対象製品の製造等の時点で当業者が容易に想到できたものであり、
④ 対象製品が出願時に公知技術・容易推考技術ではなく、
⑤ 対象製品を特許請求の範囲から意識的に除外した等の特段の事情もなければ、
対象製品は、特許発明と均等であるとして、特許発明の技術的範囲(特70条1項)に属するものとする考え方をいう。

引用出典1::最判H29.3.24「マキサカルシトール事件」
平成28(受)1242 特許権侵害行為差止請求事件 特許権 民事訴訟
平成29年3月24日 最高裁判所第二小法廷  判決 棄却 知的財産高等裁判所

引用出典2:知財高判H28.3.25「マキサカルシトール事件」
平成27(ネ)10014 特許権侵害行為差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟
平成28年3月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所

板書最判H29.3.24「マキサカルシトール事件」


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